▼詳細
東京地方裁判所判決、平成17年6月30日
(事実の概要)
片道二車線の道路を直進していた自動二輪車(被害者)と反対車線から対向車線を超えて路外の駐車場に入るために右折した自動二輪車(加害者)が衝突した。
被害者は本件事故により、右前腕骨骨折、右橈骨神経不全麻痺等の障害を負い、右前腕の回内、回外制限による日常動作、職業上の困難、右橈骨神経領域の知覚鈍麻の自覚症状、回内回外制限により作図困難という他覚症状がある。
(被害者の主張)
・前腕回内については、他動で右10度、左90度、自動で右10度、左90度、回外で右70度、左90度、自動で右60度、左90度であり、これらの神経症状と、可動域制限及び骨移植に伴う症状からすれば、後遺障害は「一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの」として10級10号に該当する。
・右手の骨移植をするために、腸骨を採取しており、その結果腸骨に骨変形が残存したため「骨盤骨に著しい変形を残すもの」として12級5号に該当する。
・以上の後遺障害から、併合9級にあたり、労働能力の35%を喪失した。
(加害者の主張)
・被害者の自覚症状としての手背部の知覚鈍麻、しびれ等の訴えは、診断では橈骨神経の伝導速度・波形ともに正常で、日常生活に支障を来すという程度であり、これは、「局部に頑固な神経症状を残すもの」として、12級12号に該当するものである。
・被害者の骨移植手術による腸骨から骨を採取は、「骨盤骨に奇形を残すもの」として12級12号に該当するものである。
・以上2点から、加害者には12級に該当する2つの後遺障害があるとして、後遺障害等級は併合11級である。
・被害者は神経症状、前腕の回内・回外制限及び骨移植に伴う症状を総合的にみて、後遺障害10級10号と主張するが、神経症状と関節の運動制限といった系列の異なる障害を総合して障害の程度を判断することはできない。また診断により骨移植と関節可動域の低下との関連性について否定されている。
(裁判所の判断)
・被害者には、右橈骨神経領域(右前腕)に、知覚鈍麻、しびれ等が残存しているから、右橈骨神経に障害が認められ、症状固定後3年以上経過した現在も症状が残存していることから、「局部に頑固な神経症状が残存した」として「12級12号」が認められる。
・被害者は、神経症状と、関節の可動域制限等を総合して10級10号の後遺障害が残存したと主張するものと解されるが、同号に該当するというためには、患側の可動域制限が、主要運動である屈曲(掌屈)・伸展(背屈)運動について健側の2分の1以下に制限されている必要があるが、被害者の主張の可動域制限は、参考運動の制限にすぎない。そのため、腕関節の機能に著しい障害が残存したとはいえない。
・以上のことから右橈骨神経の障害及び腕関節の可動域制限により、併合11級に相当する20%の労働能力を喪失し、また喪失期間は27歳(症状固定時)から67歳までの40年間とみるのが相当である。
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