びまん性軸索損傷
■びまん性軸索(じくさく)損傷とは?
びまん性軸索損傷の「瀰漫(びまん)」とは、一面に広がり満ちることを言い、「軸索」とは、細胞より延びていると突起部分(神経線維)で、神経細胞において信号の出力を担うもののことを言います。
脳が頭蓋内で強くゆすられた場合、脳深部は脳表部よりも遅れて回転します。
そのため、「軸索」と呼ばれる脳の神経細胞の線維が、広い範囲で強く引っ張られ、損傷し、
認知障害や人格変化といった障害が出ることをいいます。
■びまん性軸索損傷の症状
受傷直後から6時間を超えて意識を失っている等といった症状がある場合を、びまん性軸索損傷と言われています。
重症例としては、脳の奥深くにある生命維持中枢である脳幹が傷つき、呼吸が困難になったり、急死することもあります。
■びまん性軸索損傷の問題点
意識障害があるのにもかかわらず、CTなどの画像上では明らかな血腫や脳挫傷が現れないため、びまん性軸索損傷は、障害と事故との因果関係が認められにくいため、本当は事故が原因だったとしても、認められにくいという問題があります。
■びまん性軸索損傷の後遺障害等級
後遺障害等級は程度に応じて、1 、 2 、 3 、 5 、 7 、 9 級から認定されることなります。
脊髄損傷
■脊髄とは?
脊髄とは脳から伸び脊椎(背骨)の中を通ってる太い神経であり、脳から送られる命令を末梢神経に伝え、また抹消神経からの情報を脳に伝える重要な役割をしています。
脊髄は脳と同じく中枢神経ですので、末梢神経と違い一度傷つくと二度と再生はしません。
脊髄は部分ごとに髄節として、上から頸髄、胸髄、腰髄、仙髄、尾髄に分けられています。
>■脊髄損傷とは?
脊髄損傷とは、脊柱に強い外力が加えられることにより脊椎を損壊し、脊髄を損傷することをいいます。
脊髄は一度傷つくと二度と再生しないため、脊髄損傷による障害は治らないということになります。
■一般的症状
脊髄損傷には、損傷の程度により、脊髄が横断的に離断し、神経伝達機能が完全に断たれた状態である「完全型」、脊髄の一部が損傷、圧迫を受け、一部機能が残存する「不完全型」があります。
完全型の場合、脳からの命令は届かず運動機能が失われます。また、脳へ感覚情報を送ることもできなくなるため、感覚知覚機能も失われることになります。つまり「動かない、感じない」という麻痺状態に陥ることになります。しかし全く何も感じられないわけではありません。受傷部位に疼痛が残ることが多く、また、実際には足が伸びているのに曲がっているように感じられるといったことや、痺れ、あるいは肢体切断の場合と同様に、麻痺で本来ならば感じられないはずの痛みを感じることもあります。
■麻痺の種類
脊髄損傷の結果起こりうる麻痺の種類として、両腕と両脚が麻痺になる「四肢麻痺」、
右側、左側のどちらか一方の手足が麻痺になる「片麻痺」、両腕両脚のどこか一つが麻痺になる「単麻痺」、両腕あるいは両脚のどちらかが麻痺になる「対麻痺」があります。
■麻痺の程度
麻痺の程度は「高度」、「中等度」、「軽度」に分けられます。
「高度の麻痺」とは、障害のある腕または脚の運動性・支持性がほとんど失われ、障害のある腕または脚の基本動作(腕においては物を持ち上げて移動させること、脚においては歩いたり立った姿勢を保つこと)ができない程度の麻痺を言います。
「中等度の麻痺」とは、障害のある腕または脚の運動性・支持性が相当程度失われ、障害のある腕または脚の基本動作にかなりの制限があるものを言います。
例えば腕であれば、障害を残した腕で500グラム程度のものが持てなかったり、文字がかけなかったりする場合を言い、脚であれば片方の脚に障害があるため、杖や硬性装具無しには階段を登れなかったり、両脚に障害があるため杖もしくは硬性装具なしには歩行が困難である場合を言います。
「軽度の麻痺」とは、障害のある腕または脚の運動性・支持性が多少失われており、障害のある腕または脚の基本動作を行う際の精度の高さおよび速度が相当程度失われているものを言います。
例えば腕においては、障害を残したどちらか片方の腕では文字を書くことに困難を伴うものを言い、 脚においては、日常生活では大方問題ないものの、片方の脚に障害があるため不安定で転倒しやすく、速度も遅いもの、または両脚に障害があるため杖もしくは硬性装具なしには階段を上ることができないものを言います。
■脊髄損傷の後遺障害等級
障害の程度 | |
---|---|
1級 | 生命維持に必要な身の回り処理の動作について、常に他人の介護を要するもの。 |
2級 | 生命維持に必要な身の回り処理の動作について、随時介護を要するもの。 |
3級 | 生命維持に必要な身の回り処理の動作は可能であるが 終身にわたりおおよそ労働に服することはできないもの。 |
5級 | 麻痺その他の著しい脊髄症状のため、独力では一般平均人の 4分の1程度の労働能力しか残されていないもの。 |
7級 | 明らかな脊髄症状のため、独力では一般平均人の 2分の1程度の労働能力しか残されないもの。 |
9級 | 一般的労働能力はあるが、明らかな脊髄症状が残存し 就労の可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの。 |
12級 | 労働には通常差し支えないが、医学的に証明しうる脊髄症状を残すもの。 |
PTSD
■PTSDとは?
PTSDとはPost-traumatic stress disorderの略で、日本語では「心的外傷後ストレス障害」と言われています。生死にかかわる戦争や犯罪被害といった通常ではありえないような衝撃的な体験が元となり、後になって自分の意志とは無関係にその出来事を繰り返して思い出したり(フラッシュバック)、過剰な反応をする等の様々なストレス障害を引き起こす疾患のことです。
■PTSDの症状
以下の症状が、PTSDと診断されるための基本的症状であり、これらの症状が1ヶ月以上続いている場合はPTSD、1ヶ月未満の場合はASD(急性ストレス障害)と診断されています。ストレス因子になる重大なショックを受けてから6か月以内に発症することが多いのですが、6か月以上遅れてから発症する「遅延型」も存在します。
・過覚醒
恐怖の体験により感情が高ぶり、不眠になったり、怒りっぽくなったり、集中力がなくなったりします。
・回避
ショックを受けた出来事を思い出すような状況や場面を、恐怖感が抜けずに無意識のうちに避けてしまうようになります。また何も感じなくなることにより苦痛を和らげようとするため、感情や感覚を麻痺させます。
・フラッシュバック
自分の意志に反して事故の体験が何度も思い出されたり、何度も夢に出てきたりしてうなされます。
■第9級
【障害認定基準】
通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、就労可能な職種が相当な程度に制限されるもの。
【補足的な考え方】
仕事に就けるものの対人業務ができない運転業務が出来ないなど大幅に職種を、変えざるを得ないものが該当します。
意欲の低下などにより仕事には行けないが、日常生活に支障が時にある場合もこの区分に含まれます。
■第12級
【障害認定基準】
通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、多少の障害は残すもの。
【補足的な考え方】
元の職種または同様の職種に就けるが、かなりの配慮が必要とされるものと説明されており、意欲の低下などにより仕事には行けないが日常生活は概ね出来るものもこの区分に該当します。
■第14級
【障害認定基準】
通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、軽微な障害は残すもの。
【補足的な考え方】
元の職種または同様の職種に就くことができるが、多少の配慮が必要となります。
外傷性てんかん
外傷性てんかんに係る等級の認定は発作の型、発作回数などに着目し下記の基準によって定められます。
なお1ヶ月に2回以上の発作がある場合には通常高度の高次脳機能障害を伴っているので、脳の高次脳機能障害に係る3級以上の認定基準により障害等級を認定します。
■1ヶ月に1回以上の発作があり、且つその発作が「意識障害の有無を問わず転倒する発作」または「意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作」であるものは、第5級の1の2となります。
■「転倒する発作などが数ヶ月に1回以上あるものまたは転倒する発作など以外の発作が、1ヶ月に1回以上あるもの」は第7級の3となります。
■「数ヶ月に1回以上の発作が転倒する発作など以外の発作であるものまたは、服薬継続により、てんかん発作がほぼ完全に抑制されているもの」は第9級の7の2となります。
■「発作の発言はないが、脳波上に明らかにてんかん性棘波を認めるもの」は第12級の12とする。
頭痛
頭痛については、頭痛の型の如何にかかわらず、疼痛による労働または日常生活上支障の程度を疼痛の部位、性状、強度、頻度、持続時間及び日内変動並びに疼痛の原因となる他覚的所見により把握し、障害等級を認定します。
■「通常の労務に服することはできるが、激しい頭痛により時には労働に従事することが出来なくなる場合があるため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの」については、第9級の7の2に該当します。
■「通常の労務に服することは出来るが、時には労働に差し支える程度の強い頭痛がおこるもの」については第12級の12に該当します。
■「通常の労務に服することはできるが頭痛が頻回に発現しやすくなったもの」は第14級の9に該当します。
疼痛、カウザルギー、RSD
■疼痛
疼痛(とうつう)とは、痛みをあらわす医学用語の一つで、じんじんとうずくような痛みです。からだの組織の損傷や、損傷を起こす刺激が、神経系を通じて脳に伝わる感覚をいいます。
痛む場所によって中枢神経性の疼痛と末梢神経性の疼痛があり、原因としては身体的な痛みと心因的な痛み、精神疾患性の痛みがあります。
交通事故によって傷害を負い、その傷害が治ったとしても、その受傷部位に痛みが残れば疼痛による後遺障害として認定される事があります。
しかし、例えば肩関節に機能障害が残った場合、その関節機能障害が後遺障害等級として認定された場合には、その関節に疼痛が残っていても、その疼痛を独立した後遺障害としては評価しないで、関節機能障害の後遺障害としての評価に含むものとして扱われる事が多いようです。
■カウザルギー
①カウザルギーとは?
カウザルギーとは、約160年前のアメリカ南北戦争時に、末梢神経の損傷後に見られる手や足に対する焼け火箸を当てられたように灼けつくような痛み、皮膚の変色、過度の発汗等の自律神経症状を訴える患者に対し名付けられた、ギリシャ語の熱を表すkausosと、痛みを表すalgosから作られた用語です。
各種薬物療法、神経ブロック、リハビリテーション等を行いますが、完治は 困難と言われています。
②カウザルギーの症状
受傷部位の末梢部分損傷後に起こる、手や足への激烈な灼熱痛が特徴で、皮膚の変色、発汗の異常、皮膚の萎縮、骨の萎縮、関節拘縮等の症状が生じます。
③カウザルギーの後遺障害等級
カウザルギーの認定については、「関節拘縮」、「骨の萎縮」、「皮膚の変化」が認定要件となり、その程度により7級、9級、12級が認定されることになります。
■RSD
①RSD(反射性交感神経性ジストロフィー)とは?
RSDとは、Reflex Sympathetic Dystrophyの略語で、日本語で反射性交感神経性ジストロフィー又は反射性交感神経萎縮症と呼ばれ、神経因性疼痛の代表的なものとされています。
例えば交通事故で外傷を受けると、交感神経の反射により痛みを感じますが、外傷が治癒するとともに痛みも治まります。しかし、この交感神経の反射機能に異常が生じているRSDの患者は交感神経の反射が止まらず、神経が脳に誤った信号を送り続けることとなり、正常な感覚、温度、血流などの情報を乱してしまう異常な交感神経亢進状態が続きます。
そのため、局部に血液が行き渡らずに、激しい持続的な痛みを伴うこととなります。
RSDは異常な交感神経反射を原因とする四肢の痛みのことであるという点で、末梢神経の損傷や障害によって生ずるカウザルギーと区別されています。
②RSDの症状
通常は外傷を受けた部位、またはその付近に
焼けつく様なような痛み、軽い接触による過敏な反応、皮膚の色等の変化、骨の萎縮、
過度の発汗といったことが発症します。検査所見もカウザルギーとほぼ同様です。
③RSDの後遺障害等級
症状固定時に「関節拘縮」、「骨の萎縮」、「皮膚の変化」といった症状が認められる必要があります。それらの所見や程度を参考にし、7級、9級、12級が認定されることになります。
失調、めまい、平衝機能障害
失調、めまいおよび平衝機能障害については、その原因となる障害部位によって分けることが困難であるので、総合的に認定基準に従って障害等級を認定します。
その認定は神経系統の機能障害として、3級、5級、7級、9級、12級、14級に分類されています。
アクセス
【電車でお越しの場合】
JR:「元町」駅西口より西へ徒歩5分
神戸高速鉄道:「花隈駅」東口から南に徒歩2分
【自動車でお越しの場合】
阪神高速「京橋」出口より2号線へ。信号「中央突堤」にて右折し4つ目の信号で左折してください。
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